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02 デジタル戦略

デジタル時代に朝日新聞社はどう自らを変化させ、ブランドを進化させていくのか。
戦略の中枢を担う佐藤敦デジタル・イノベーション本部長に聞きました。

朝日新聞社のデジタル事業の強みとは?

佐藤:朝日新聞デジタル(朝デジ)は2011年に有料版としてスタートしました。今では月間2.6億PV、サイトの訪問者数を表すUB(ユニークブラウザ)は4千500万。さらに、300万人を超える会員がいます。日本有数の情報サービスと言えるでしょう。そこに、国内外から情報を集める取材網を持ち、24時間いつでもコンテンツを配信できる仕組みを持っているということは、我々のデジタル事業の最大の強みです。

朝日新聞デジタル

 朝デジがコア事業としてありますが、他にも色々なサービスがあります。記事や写真、動画は、朝デジだけでなく、ヤフーニュースやスマートニュース、グノシーといった外部のプラットフォームに提供しています。auニュースとも協業していて、新聞社のサイトを見に来ない人にもリーチする手段を持っています。これら外部プラットフォームへの配信も、我々のコンテンツにアクセスしてもらう大きな部分を占めています。

 また、朝日新聞社は、新たな発信や読者のみなさんとの対話を目指して、記者個人や、取材チームなどのグループによるツイッター活用を進めています。こういった記者たちのSNS活用も、かなり早くから始めました。記者たちのツイートがきっかけで朝デジに読者が来る流れにもなっているのです。

記者ページ、記者アカウントの紹介

 朝デジそのもののパワーと、外部プラットフォーマーのパワーと、大勢の記者たちの公式SNSアカウントによるユーザーにリーチするパワー。これを持っていることは日本有数の情報サイトとして強いアドバンテージがあります。紙の新聞を購読していない人にも届けることができ、これまで新聞社が持っていた顧客の範囲を大きく変える原動力になっています。

 私たちデジタル・イノベーション本部(DI本部)は、ニュースをネットユーザーにリーチさせ、色々なビジネスにチャレンジしています。

 withnewsはその典型です。withnewsは若い人に向けて、朝日新聞とは別ブランドのwebサイトとして2014年に始めました。読者が日々のニュースで気になることを、記者が深掘り取材をして解決します。取材してほしいことの募集もしています。
記者は、取材したこと、withnewsと紙の新聞に視点や書き方を変えて書き分けたり、withnewsでよく読まれた記事が後日、紙の新聞に載ったりという流れもできました。withnewsを朝日新聞社がやっていることを知らない人もいて、おもしろい展開ですよね。

withnews

新しいことに挑戦したい社員のための「15%ルール」とは?

佐藤:意欲があって新しいことに挑戦したい社員のために、デジタル・イノベーション本部には「15%ルール」があります。業務時間の15%は、直接担当している以外の仕事をしてよい、というものです。上司の許可を取れば、隣りの部署の仕事を手伝ってもよし、他部署の仕事でもOKです。僕がビジネス開発部長のときに始めました。グーグルは20%でやっていますよね。

 例えば、高校野球に特化したサイト「バーチャル高校野球」は専従チームをつくって運営していますが、あえて専従チームをつくらなかったときがあります。そのときは、15%ルールを使って、それまで専従チームに入っていなかった人が「私もやりたい」と手を挙げたり、忙しい時期に応援してくれたりする人が現れました。

バーチャル高校野球

 バーチャル高校野球は、記事や写真を掲載するだけでなく、今は地方大会からライブ中継しています。

このように、新聞が持っている価値をまずネットに展開することでビジネスの基盤をつくり、そこから新しい価値を付加し、新しいお客さまと新しい商品開発を進めています。

メディア環境の変化については?

佐藤:テクノロジーが進化し、メディアをめぐる環境は日々変化しています。ユーザーの反応を細かく分析できるようになり、インターネット広告では検索履歴などに連動した運用型広告が伸びています。

 今は多くの人がスマートフォンを持って、自分の好きなサービスを使っていますよね。「5G」が始まれば、動画など大容量のデータを速くやりとりできます。動画や音楽配信でいえば、「サブスクリプション」とよばれる定額制は浸透しましたし、サブスクリプションはマンガ・書籍、自動車や洋服、外食にも広がっています。

 ニュースとの接点も、新聞やテレビのほかに今はニュースサイトやアプリ、SNSもあります。以前は「読者をとられてしまうのでは」「新聞社と対立するのでは」と言われたこともありました。でも、これらのサービスのおかげで、スマホでニュースをみる習慣が多くの人にできましたよね。私たちがニュースを配信しているヤフーからは、配信料を得ています。今やどこまでが新聞社の領域で、テレビ局はこれ、webメディアはこれをする、というような境目はありません。ライバルでもありますが協業もできると思っています。

朝日新聞の強みをどう生かしていく?

佐藤:コンテンツを使ってネットに出て行くことで新しい顧客を獲得し、そこから顧客のニーズをくみ取って、我々のコンテンツ制作力を駆使して新しい商品を開発していきます。ユーザーのニーズやテクノロジーは変わっていくので、見合ったものを提供していきたいです。

 単に情報を提供して「おもしろいね」と思ってもらうだけでなく、付加価値をつけて、次のアクションにつながるサービスをつくっていかないといけないし、そのようなコンテンツを提供するべきだと思っています。アクションとは例えば「実際にイベントに参加する」「ボランティアをする」「旅行などその土地に行ってみる」「投票に行く」「勉強する」というようなことです。

 様々なメディアの間でシームレスな戦いが始まっています。我々はチャレンジャーです。自分の裁量で工夫をしながらどんなトライができるか。これまでと違う戦い方をしてみたい人、チャレンジしたい人を待っています。

Profile

佐藤 敦(さとう あつし)
 1967年東京生まれ、キヤノン株式会社ソフトウエアエンジニアを経て、1999年朝日新聞社入社。デジタル部門においてニュースサイト・朝日新聞デジタルをはじめ、デジタルコンテンツサービスの企画開発に携わる。2002年米スターフォード大学客員研究員、2012年朝日インタラクティブ取締役、2013年デジタル本部ビジネス開発部長、2017年デジタル・イノベーション本部長補佐、2019年から現職(デジタル・イノベーション本部長)。

Profile 佐藤 敦

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