Asahi Shimbun Digital 進化する報道Ⅰ 朝日新聞デジタル

朝日新聞デジタルは、国内外の記者たちが取材したニュースを伝えるサイトです。テキストと写真に加えて、映像やグラフィック、音声なども組み合わせて、複雑な事象をわかりやすく伝える工夫をしています。そんなコンテンツの一部を紹介します。

デジタルの表現力を駆使してニュースの深層に迫るシリーズ。どんなコンテンツなのか言葉ではなかなか伝えきれないので、ぜひクリックしてご覧ください。

現場からのルポ、問題を掘り起こす調査報道、専門家へのインタビューなど、えりすぐりの連載シリーズ。

愛された店や思い出の場所の「最後の日」に密着する映像企画。新聞社でもドキュメンタリーをつくれるのです。

ニュースと人をつなぐ

朝日新聞デジタルには、課金して読んでくださっている方向けの機能があります。一部を紹介します。

このニュースをどう受け止めればいいのかと、戸惑うことはありませんか。「コメントプラス」は、いろいろな分野の専門家、取材経験が豊富な記者、計150人以上がニュースに「解説」「視点」「提案」の切り口で補助線を引いてくれるものです。

プレゼント機能は、有料会員でないと最後まで読めない記事を、それ以外の人にもシェアできるものです。24時間誰でも読めるURLを発行します。MYキーワードは、気になるワードを登録しておくと、その言葉が含まれる記事が表示されるというものです。保存しておきたい、後で読みたい記事は、スクラップブック機能が便利です。

ニュースの隣にある情報

朝日新聞デジタルマガジン &[and]は、朝日新聞デジタル内にあるウェブマガジン。「日々にちょっとずつ、彩りを」をコンセプトに、趣味やライフスタイル関連の情報を届けています。

記者たちの挑戦

現場の記者たちはどんな思いで変化に対応しているのでしょうか。社会部デスクの仲村和代さんに聞きました。

「どんな表現をするか」試行錯誤

紙の新聞の部数が減っていくなか、デジタルでどう生き残っていくのか。報道機関としての役割を果たしていくために、なにをすればいいのか。いま、報道の現場でも、そんな議論が交わされることが増えています。

その「解」を探るためにできたのが、デジタル機動報道部(現・デジタル企画報道部)でした。20人あまりの小所帯で、日々のニュースに即して出稿を考える機動報道チーム、データジャーナリズムチーム、そしてwithnews編集部という3つのチームに分かれてスタートしました。

私は主に機動報道の部分を担い、「どんなコンテンツを出していくか、どんな表現をするか」などを考える役割でした。記事を読んでもらうためにはどうしたらいいか、さらには「お金を払ってでも読みたい記事」とはどんなものか。それを探るために、日々、試行錯誤していました。

部が発足した当初は、「何を取材し、読者に届けていくか」の議論から始まりました。私自身は記者としての大半を社会部で過ごし、この10年ほどネット系メディアなどの取材にも関わってきました。その中で、新聞というメディアが生き残っていくためには「ネットでバズりやすい」話題を追うよりも、新聞が従来担ってきた報道をより深掘りしていった方がいいのでは、という思いが強まっていました。

話題の軽さや速さという意味では、様々なネットメディアがあり、さらに個人でも影響力のある人がいます。そうした情報があふれる中で勝負しても、新聞というメディアは不利。プロの記者が関わるからこそできる報道にこだわりつつ、デジタルに親和性の高い表現を追究していく方がよいのでは、と考えていました。

このため、大事にしたのは、「記者の問題意識を大切にすること」。通常、新聞社では「政治」「暮らし」「事件」など、テーマや持ち場がある程度決まっており、次々に起きる出来事に追われる形になりがちです。デジタル機動報道部には、そういった担当は特になく、従来の部の枠組みでは拾いきれないような話題を、時には他の部と協力しながら取材しました。

仲村 和代(なかむら・かずよ) 両親が沖縄出身で、生まれは広島県。2002年に入社し大分総局、長崎総局、福岡報道センター、東京社会部、静岡総局、マーケティング部、デジタル機動報道部デスクを経て、23年5月から社会部デスク。

子育ての悩み 部を超えて連携

2年目に力を入れたのが、ハグスタという枠組みです。もともと、子育て世代向けの紙面のコーナーとして始まり、デジタルにも発信していました。社内には、子どもの問題に関心を持っている記者がいろんな部にいます。こうした人たちをつなげば、さらによいコンテンツ作りにつながるのでは、と考え、週1回、「誰でも参加できるミーティングの場」を作りました。出稿義務はなし、アイデア出しっぱなしでもOK、という場です。ミーティングは毎回、大変もりあがり、「ちょっと気になっている子育ての悩み」から、事件や事故が起きた際の素早い出稿まで、多角的な報道につながりました。

保育園で散歩中に公園などに園児を置いたまま気づかずに戻ってきてしまう「置き去り」事案についても、保育士の配置基準の低さなど構造的な課題を踏まえた報道を続けました。子育てをしている記者の問題意識をいかして、対策や防止策を社会に問うことができたと考えています。

SNSも活用 転機は東日本大震災

私自身は大学時代から少しずつ、ネットが日常生活に入ってきた世代です。ITバブルといわれていた時代でもありましたが、私自身はさほどの興味はありませんでした。ただ、2010年に社会部のメディア担当になり、向き合わざるをえない場面がどんどん増えてきました。

2011年の東日本大震災では、ツイッターの社会部公式アカウントでの情報発信に関わりました。今ではもう当たり前になりましたが、報道機関の公式アカウントでの発信はまだ少なく、デマも含めた情報が飛び交う中で、「確かな情報を届ける役割」を果たせたと思います。

一方で、それまでの紙を通じた発信がいかに「作り手目線」だったかも痛感させられました。例えば、新聞の紙面では「市内の○カ所に給水場所を設けた」といった形の原稿を書いてきました。スペースが十分でなく、手間もかかるため、すべての場所を紹介するのは難しいと考えられていたからです。

ところが、読者が知りたいのは「何カ所か」より、「自分の家の近くのどこで給水できるか」。給水場所がなければ、情報としてはほとんど意味がありません。ツイッターでこうした反応をもらって軌道修正できたことは、発信のあり方を考える契機になりました。2012年末には、ツイッターなどのSNSで「取材すること」をテーマにした新しいタイプの企画にも関わりました。これももう今では当たり前になりましたが、当時はまだこうした取材手法は一般的ではなく、手探りでの試みでした。

その後、SNSで拡散された匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね」など、ネット上の話題そのものがニュースになり、社会現象になることも次第に増えていきました。 人々の生活と切り離せないものになったデジタルの世界。メディアとしても当然、それに合わせた変革が必要とされています。

「紙面の制約」を超えて

紙には、紙でなければ出来ない表現や面白さがあります。一方で、どうしてもスペースに限りがあり、十分に伝え切れないという限界があります。さらに、記者の動きも「紙面に載るかどうか」を前提にすると、制約されてしまう面があります。デジタルの可能性の一番のポイントは、その制約を取っ払うことなのではないか、と感じます。さらに、読者の反応を見ながら修正し、次につなげられるのもデジタルの良さです。

デジタルに向けた取り組みは、さらに次の段階に進んでいます。デジタル機動報道部は「デジタル企画報道部」にリニューアルされ、新たに、立ち止まるためのメディアRe:Ron(リロン)がスタートしました。ネットに膨大な情報があふれる時代、対話を重ねて「論」を深め合うことを目指しています。

私自身は2023年5月から社会部に足場を移し、引き続きデジタル化にも取り組んでいます。社会部はその名の通り、いま社会で起きていることと向き合う部署。生活の一部となった「ネットの世界」が取材対象である一方で、事件や裁判、国の役所など、長年報道機関として取材を蓄積してきた分野もあります。実は、一見デジタルとの親和性が低そうにも見えるこうした分野は、報道機関がデジタルで生き残っていく上での「強み」でもあると感じています。

強みを生かすためにも、大切なのは、記者自身が普段感じている問題意識を生かし、発信していくことなのではないか。記者が普段感じている「面白い」「これはおかしい」「とてもいい話だな」という思いを大切にする先に、何かが見えるのではないか。そう信じ、投げかけを続ける日々です。

総力を結集

朝日新聞デジタルのコンテンツづくりには、記者以外に、フォトグラファー、編集者、グラフィックデザイナー、動画ディレクターなどが関わっています。さらに、より多くの方に読んでいただくためのキャンペーンやユーザー体験の向上、マーケティング、広告プランニングなどを、ビジネス部門の社員が担っています。技術部門のエンジニアは、こうしたシステムの開発・運営をしています。企画・構想段階から加わることもあります。

朝デジ事業センターでは、記者・ビジネス・技術部門出身の社員が一緒に仕事をしています。また、プロジェクトごとに部門や所属を超えてチームを組むことも増えています。

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