Finance 財務の仕事

現場の思い 経営計画につなぐ

社内の各部門が事業を成長させるため、財務部門にはお金にまつわるさまざまな要望が寄せられます。一方で、会社全体が経営目標とする売上、支出、利益等も存在します。経営目標と現場からの要望のバランスを見ながら、予算配分を決め、収益の見通しを立て、具体的な経営計画をつくるのが朝日新聞社の財務部門の仕事です。

もう少し詳しく整理すると、次のような業務に分かれます。

Ⅰ 経営計画作成

予算作成/中期経営計画作成/長期間シミュレーション

Ⅱ 投資結果の検証・分析

単体決算・レポート作成/連結決算・レポート作成/業績予測

Ⅲ 事業費用の削減

価格交渉/原材料調達

Ⅳ 資金管理

資金運用計画/資金調達

Ⅴ 法令対応 

有価証券報告書作成/税務申告/社内税務相談

Ⅵ 業務効率化

分析データ提供/会計DX

部員座談会

実際のところ、職場はどんな雰囲気? 仕事の魅力は? 経理部、購買部所属の4人に語ってもらいました。

及川 龍之介(おいかわ・りゅうのすけ) メーカーの財務職を経て、2022年に朝日新聞社に転職。経理部で、新聞業や朝日新聞デジタル等の業績管理をするニュースメディアチームの担当課長を務める傍ら、他の事業を管理するチームをとりまとめる。好きな食べ物は肉。

祖父江 開斗(そぶえ・かいと) 2021年入社、経理部。現在は広告部門を担当。広告料収入/広告費など新聞広告に関わる収支管理や分析、月次決算・年次予測・中期経営計画の作成や税務申告、監査対応にあたるほか、次年度の会計システム更新に向けたPJにも参加。業務改善提案や契約スタッフの統括業務も。

斉藤 夏乃(さいとう・なつの) 2022年入社。管理部門で2年間、住民税、年末調整、社内申請などを担当。24年6月に経理部に。印刷代、トラックの輸送費、工場の維持費など主に新聞に係る収支の決算業務を担当。他に、海外支局の会計報告、年次決算の際は損益計算書の作成なども。

辻 泰弘(つじ・やすひろ) 2007年入社。朝日新聞や朝日新聞デジタルの広告の営業を約15年経験。23年に財務に異動し、24年7月から購買部。朝日新聞社の業務で必要なモノやサービス、鉛筆からジェット機まですべての調達をおこなう守備範囲の広さが購買業務の魅力。最近は肉より魚が好き。

職場はどんな雰囲気ですか?

及川 比較的若い部員が多いです。在宅勤務と出社が半々くらいで、出社のときは時々お昼に行きます。

祖父江 時々? 100%行くじゃないですか。午前中はだいたい「昼、何を食べようか」という話をしています。

及川 最近は「カレッタ汐留」の汐留横丁がお気に入りです。

斉藤 異動前は祖父江さんくらいしか知らなくて不安でしたが、思ったより年齢が近い方が多くて、何でもフランクに聞けて安心です。

及川 え、俺、一応同期…。

斉藤 ごめんなさい、忘れてました(笑) でも異動後なにも分からない中、部内で誰がどんな仕事をしているのかとか、システムや資料の使い方などを約1か月かけて教えていただきました。今も、在宅勤務中にわからないことがあっても、すぐTeamsをつないで教わっています。

及川 人材育成チームというのをつくり、教育には力を入れています。なんでも意見を言いやすい空気をつくることも気をつけています。

祖父江 入社前は財務に硬いイメージがありましたが、そんなことは一切なくて、働き方含めむしろかなり柔軟で明るく風通しの良い雰囲気ですね。淡々と数字と向き合うだけでは全くなく、各方面とのコミュニケーションも必要で、広い視野を持って仕事することが大切だということも実感しています。斉藤さんが話してくれた研修も、下からの意見を取り入れてもらいました。

 外から来た僕の理解では、経理や財務の仕事って、知識・理解の積み重ねが全てなんですよ。人によって経験年数が違うから、知識・理解も当然違う。だからこそ、それを共有できる雰囲気、フランクに聞ける職場って大事だなと思います。横で見ていてすばらしいなと感心しています。

仕事の魅力は?

斉藤 組織改編で管理と財務が一体化して「コーポレート本部」になり、人事交流の一環で異動しました。管理部門内の異動だと思っていたので驚きましたが、一からがんばろうと思いました。前の職場では社員一人一人の相談を受ける仕事が多かったのに対し、今は会社全体の金額をみて、自分の担当分野について現場にヒアリングすることが多いです。自分の頭で考えることがより求められます。

 入社以来15年ほど広告の営業をしていましたが、希望して財務に異動してきました。広告の仕事は、企業の新商品やブランディングを世の中に伝える、ヒトの営みに触れる仕事でしたが、財務では法律や会計の仕組みの中で、世の中や企業経営の仕組みを知ることができる大変面白い仕事だと思います。たくさんの部局や、企業と関わることができるので、一つ一つがとても勉強になります。

祖父江 1~2年目はシステムや福利厚生、編集など、支出のみの部門を管理しました。例えばシステムは、毎月あまり変わらない一方、保守のタイミングで一気に大きな支出があります。経営へのインパクトも大きいので、経営会議にあげる資料を作ったりもしました。3~4年目は企画事業・広告業など、収入・支出両方あるような部門を見るようになり、どの業界との取引が多いのか」とか、「どの催事でどういうことがヒットしたからこういう決算になっているのか」なども見えるようになってきました。

斉藤 異動してまず「仕事への熱量が高い部署だ」と感じました。今ある仕事をこなすのではなく、なくせる仕事は徹底的になくそうという気概がある部署だと思います。また、実務に財務知識が必要になるため、各々自己研鑽に励んでいる印象です。わたしも簿記の勉強をしています。

祖父江 2年目くらいから、業務改善の提案もするようになりました。無駄をなくせるなら、なくしたほうがいい。前例にとらわれず、社員の経費精算のルール変更や、各部局との残高共有方法の変更など、省力化、効率化を進めています。

及川 ルール変更では部内外からいろんな意見が出ることもあるのですが、彼はメリットが大きいですよということをしっかり説明してやり切っていくので、すごいなと思います。今まさに社内の会計システムの変更に取り組んでいます。決まった仕事を決められた通りにするなら、AIでいい。AIができないことをやりたいなと思っています。

こんなキャリアも

財務の経験を積んだ後、より経営に近い事業領域にステップアップする社員もいます。2人の例を紹介します。

青山龍介さんは新卒で財務部門に配属され、その後、コンサルティング業界に転職。ふたたび朝日新聞社に戻り、現在はコーポレート本部経営企画ユニットでM&Aなどを担当しています。

ーー朝日新聞社の財務部門の特徴は?

いくつかの会社を見て感じたのは、裁量の大きさです。このページの最初の方にある分類でいうと「Ⅰ 経営計画作成」「Ⅲ 事業費用の削減」を財務部門で担っている会社は珍しいかもしれません。会計のルールを知っていること、解釈する力は大事ですが、それだけを基準に判断するだけではないというのが、財務のエキスパートである監査法人や税理士とも違うところです。同じ組織の仲間である事業部門に伴走し、定性的なところを定量化する、すり合わせて実現をめざす。そんな仕事です。

ーーひたすら数字と向き合う仕事とイメージしていましたが、折衝が多いのですね

もちろん数字は見ますし、データから費用対効果を計るわけですが、まずは各部門の人たちと話します。現場のみなさんの肌感覚は、だいたいあっていることが多い。その肌感覚を定量化していく役割です。交渉の方法によって「誰がやっても同じ結果」にならないおもしろさもあります。

はっきり白黒つけられず、グレーの部分にどういう塩梅で落としどころを見つけられるか、という性質の仕事が多いです。そういう意味では、机に向かってコツコツというよりも、人の話を聞くのが好き、人とたくさん話してアイデアを出すのが好きという方に向いているかもしれません。
 

ーー現在の仕事は?

経営計画の課題の洗い出しや進捗の点検、M&Aにあたっての財務的な分析などをしています。その会社の状況や今後の見通し、朝日新聞社側にとってのメリット、リスク、そして適正な買収額。判断材料は多岐にわたりますが、こうしたことを定量化しておくことがまずは大事です。財務諸表を読めたり、税金に関わる法律や制度が少しわかったり、財務で培った力が役立っています。

青山 龍介(あおやま・りゅうすけ) 2012年、朝日新聞社入社。財務本部経理部(当時)に配属​。17年、外資系コンサルティングファームに転職。20年、ジョブリターン制度で再び朝日新聞社へ。社員の経費精算のDX化を実現した。24年7月から現職。

ーーいったん会社を離れて見えたことは?

社員それぞれが、自社で取り組んでいることに意義を見出している会社って、あまりないんじゃないかなと思います。このくらい歴史がある会社だと、上意下達の傾向もありますが、朝日新聞社はそうではないですね。財務部門については、入社まもなくから特定の事業部門を任されて、その部門に伴走できる裁量もあります。

ーーファーストキャリアとして財務を選ぶことはどう思いますか?

いいと思います。100年以上歴史がある会社で、今後まだいろいろな事業展開の可能性もある。一方で、このままではいけないという危機感を多くの社員が共有しているから、どの部門の社員も財務を含め人の意見を聞く土壌があります。言われたことを言われたようにする会社のほうがいい人もいるかもしれないけど、日々いろんなことを考えて、チャレンジできるというのは自己成長につながると思います。

中島由登さんは入社8年目に経理部から不動産業務室に異動し、東京銀座朝日ビルなどを担当しています。

ーー異動のきっかけは

もともと不動産や物件に興味がありました。大阪在勤中、できたばかりの中之島フェスティバルタワーWESTを見上げて歩く人たちの姿や、フェスティバルホールのことを話題にしている人の声にふれ、街の人に愛されていることにとても誇らしい気持ちになりました。この会社はこんなにすばらしい仕事をしていたんだ、自分も長く残る仕事に関わってみたい、と思い、社内公募に手を上げて不動産業務室に異動しました。

ーー現在の仕事は

ホテル「ハイアットセントリック銀座東京」などが入っている東京銀座朝日ビル(2017年竣工)や、40周年を迎えた有楽町マリオンなどを担当しています。新たに建てたビルは、この先50年、60年維持しなければなりません。収入はどうか、支出はどうか、向こう10年どうお金を使って保全していこうか、お金をかけたところで収益性が悪くならないか……。テナントの契約交渉から、細かいところでは照明の更新、シーズンイベントの装飾まで、新聞社のビルとしての方向性とテナントの意向を両方汲みながらバリューアップをはかっています。

関係者との交渉では、数字をベースに議論することになります。補助金をどう活用するか、資金計画をどう立てるか、地道に積み上げる財務の仕事のスタイルが役立っています。

中島 由登(なかじま・ゆうと) 2014年入社。財務本部経理部、大阪財務部(いずれも当時)​を経て、21年7月から現職。

ーー新聞社の不動産事業と他のディベロッパーの違いは

朝日新聞社の不動産は、新聞を売って稼いだお金で買ったものです。報道機関の実績の上に、私たちの不動産の仕事がある。今は本業を守る大きな柱の一つになっていますが、根っこには報道機関としての役割があります。

直接の担当ではありませんが、広島プロジェクトという事業が進んでいます。弊社や広島市が所有する土地を官民共同で再開発する計画で、街づくりに構想段階から関わっています。ただ「儲かればいい」ではなく、新聞社としてめざす方向性、事業性を打ち出し、それに共感してくださる方がいるということが大事だと思います。
 

ーーところで、もともと財務志望だったのですか?

文系出身で、数字がたくさん並んでいるのを見るとウッとなる方でした。会計用語もわからないし、書類も念仏のように見える。なんとか勉強しながら仕事を覚え、財務諸表が読めるようになり、2、3年経つと自分なりの考えも持てるようになりました。会社がどうお金を動かしているか、計画を立てて実行していくのか、それを肌身で感じられる仕事です。いずれどこかで通るなら、若いうちに経験しておくといいよ、と思います。

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